ブリタニカ

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※感想については全てネタバレあり。くれぐれも鑑賞後にご覧ください※

バーン・ノーティス 元スパイの逆襲

製作総指揮:マット・ニックス

出演:ジェフリー・ドノヴァン

区分:海外ドラマ

評価:★★★★★

 

マイケル:『俺の名はマイケル・ウェスティン。元スパイだ。』

マイケル&フィオナ:『「ここどこ?」「マイアミ♡」』

サム:『スパイって奴は、やんやあうるさいからなあ』

ジェシー:『こんちわ!』

ジェシーのセリフはタイトルコールでは登場しないが、妙に彼の「こんちわ!」がツボだった)

 

もうこれらのセリフを、新鮮な気持ちで聞くことはできない。とてつもなく寂しい。全ては良い思い出に成り下がってしまって、二度と最初に聞いたときの、いつも聞いていたときの、あの心持ちでは聞けなくなってしまったのだ。そして、その事実こそがバーン・ノーティスとの別れを痛烈に意識させてくる。こうして感想を言葉にしているときにも、それはじわじわと進行していることを感じているし、それだけこのドラマが良いものだったと改めて思うこともできる。

確かに、ファイナル・シーズンのあまりにも露骨な雑さっぷりに嫌気が差したのは事実だ。カイルXYしかり、ビバヒル(現代版)しかり、フリンジしかり。海外ドラマの、視聴者を物ともしない急降下にはいつも驚かされてばかりである。「俺の名は~」の名物タイトルコールを、視聴者へ向けたものではなく、甥っ子チャーリーへのセリフへと変換させたエンディング(つまり、このバーン・ノーティスというドラマはチャーリーための物語だったと観ることも可能になる。スパイのマメ知識的ナレーションが随所で挿入されているが、あれもチャーリーへのマイケルおじさん直伝の解説だったのである)は、多少気が効いたアイデアだったかもしれないが、それでも裏切られた感は拭えない。プッツンと途切れたカイルXYよりはマシかもしれないが、それ以上ではない。

そもそも勧善懲悪+スタイリッシュユーモアが、このドラマの醍醐味だった。ネットで他人の感想をググってみたが、「スパイドラマの仮面を被った、ホームドラマ」という中々ストライクなものを見つけた。まさにそのとおりで、いかにもホームドラマ的な温かさやジョーク、誰もが思い浮かべる正義の観念。それらの普遍的かつ不変的な要素が、視聴者を易しく(要するに頭を使わずに)楽しませてくれる。その心地良さには一定のリズム、すなわち「困った人を非合法なやり方で助けるメイン+解雇の真相を追うサイドの同時進行」があって、それがクセになる。バーン・ノーティスはまさしくエンタメの優等生である。だからこそ、そのリズムを崩したファイナル・シーズンはやはり残念でならない。放送終了に向けた製作サイドの事情はあったのかもしれないが、もっと他にやりようはあったと思う。

まあしかし、不満とは往々にしていくらか残るものであり、むしろこのバーン・ノーティスの場合、自分に与えてくれた良い思い出の方が圧倒的に多い。それだけは間違いない。最後になるが、このドラマの製作に関わった全てのスタッフ・キャストの方々にお礼を言いたい。というか、何度でも言いたい。心の拠り所となってくれる作品には、滅多に出会えるものではない。だからこそ、「初見のとき限定の感動」をもう味わえないことはつらいし、同じくらいその感動を味わうことができたのは、幸せなことだったと痛感する。本当にありがとう、バーン・ノーティス。そして、マイケル、フィオナ、サム、ジェシー、ママさん(主要人物は全員好きだったけど、ママさんだけは好きになれなかった。どうしてだろう?)、心の底からありがとう!!

 

『俺の名はマイケル・ウェスティン。元スパイだ。』