ブリタニカ

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※感想については全てネタバレあり。くれぐれも鑑賞後にご覧ください※

境界のRINNE

原作:高橋 留美

監督:菅原 静貴

区分:アニメ

評価:★★★

 

主題歌も去ることながら、内容も悪くない今作。超有名作者による経験と実績に裏打ちされた安定感。それだけには止まらない目新しい要素の数々。その二点のバランスに好印象が持てる作品だ。

前者に関して言えば、主人公・六道りんねを中心とした人間模様がわかりやすく楽しい。ヒロイン・間宮桜を巡る、十文字(通称、聖灰バカ)とのやり取りは、同作者による『犬夜叉』の犬夜叉・かごめ・鋼牙の三角関係を彷彿とさせる(自分が良く知る高橋留美子作品はこの犬夜叉だけ。そのため、他作品でも類似の関係性は見られるかもしれない。余談だが、犬夜叉の七宝や雲母と、本作の六文もすごくカブる)。また、そこへ加わる鳳はヒロインの恋敵ポジションであり、彼女を以って見事に四角関係が完成する。自分の好みが関係するかもしれないが、他人の惚れた腫れたの騒ぎを見るのは、なぜだか飽きない。お馴染みのパターンは山ほど見て来たはずなのに、ついつい見入ってしまう。やはりこれは自分の嗜好の問題だろう。

さて、本作で一番考えさせられたのは、「イケメン×貧乏」の持つ魅力についてである。ド級の貧乏少年である輪廻に、桜と鳳の二人の女性が恵んでやるという構図は、ごく一般的にドラマ等で見かけるパターンではある。しかし、それをアニメの画面で、しかもコメディ要素として用いていることに自分は驚いたのである。結果は大成功だと思う。単純な笑いだけではなく、別のアプローチによって女性ファンの心を周到に掴んでいるのかなどと深読みもできてしまう。いわゆる「母性本能」という、女性の無意識の部分に働きかける点が、この作品の内部には、存在するのかもしれない。そして、その仕掛けをスマートに組み込んだ手腕に、素直に感動させられる作品であった。